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ブログ改装中


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EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM

 このブログも開設後相当時間が経過しまして、各所にいろいろとガタが出てきました。

 中でも、ブログの外観(デザイン)を決める「ブログスキン」は、かなり古い構造のものを突貫工事的な手直しを重ねながら使ってきたので、この先の信頼性がいささか怪しくなってきていました。
 そこで、今までのデザインを踏襲しつつ、今回ブログスキンの構造を根本から作り直す作業を行うことにしました。

 現在、とりあえずの工事が完了して、新しいブログスキンが適用されています。
 「何にも変わってねぇじゃねえか!」と言われそうですが、中身がかなり変わってます。
 建物のリフォームとは逆で、外観はそのままに中身を木造から鉄筋コンクリートにしたくらいの勢いで変わってます。
 骨組みとなるHTMLと外観を決めるCSSを全部書き直しましたが、細かい部分についてはまだ調整中ですのでご了承ください。

 また、記事のカテゴリとタグの振り分けについても抜本的に見直しを行っています。

 この先ずっと使えるブログを目指して、もう少し工事を頑張りたいと思います。
 
 

by TamaWakaba | 2017-03-23 00:23 | お知らせ | Trackback | Comments(0)
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外食日記 金沢市『酒房 猩々』

石川県金沢市香林坊2丁目12-15『酒房 猩々(しょうじょう)』地図

金沢市。

雨降る宵。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


長町武家屋敷跡にほど近い
香林坊、せせらぎ通り。

ここに今回目指す『酒房 猩々』
があります。

昨年秋に来た時はお休みだったので、
なんとしてもリベンジを、
と鼻息荒く入店。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


お通し。

石川の郷土料理「べろべろ」。
(または「えびす」とも)
玉子の寒天寄せ。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


『猩々』は
大の酒好きという
伝説上の生きもの。

店にその名を冠しているということは・・・
推して知るべし。

案の定、店主厳選の地酒が
あまた待ち構えております。

お好きなものでどうぞ、
ということで、
好みのお猪口をセレクト。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


「手取川」の大吟醸生酒が
片口に入って登場。
メロン+柑橘系の華やかな吟醸香が
たまらない酒。

そしてお酒と一緒に、サッとお冷が出てくる。
これ、これが嬉しい。

美味しい日本酒を美味しく飲むためには
このチェイサーが絶対必要。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


「朝とれ ちょい〆鯖」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


我が山国では考えられない程の
ピッカピカの鯖を
超浅じめで。

〆鯖というよりは
ほぼ刺身。

鯖ってこんなに美しい色をしていたのか。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


「天然ブリ刺」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


冬の北陸の大スター
天然寒ブリ。

「大根おろしと一緒にどうぞ」
とのこと。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


脂の乗ったブリと
大根おろしのサッパリ感が
見事に調和。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


「加賀生麩の揚げだし」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE
揚げたての生麩は灼熱かつモチモチとして香ばしく、
この金沢風の出汁がまた美味しい。
この出汁だけでも酒が飲める。




「いしるきゅうり」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE

「いしる」は北陸の伝統調味料。
いわゆる魚醤。
アジやイワシなどの魚を使ったものと、
イカの内臓を使っているものがあり、
それぞれ味わいが違う。

この「いしるきゅうり」には
両方をブレンドして使っているそうだ。

実は、かねてから魚醤は苦手だった。
ニョクマムやナムプラーの、
「海が攻めてくる感じ」がダメで
これまで敬遠していた。

だからこの「いしる」にも内心ドキドキ。

だが、いざ食べてみると、
激しく旨い!
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE
特に、イカの「いしる」の味わいは素晴らしく、
にわかに「いしるファン」になってしまった。

この旅の後、我が家にも「いしる(イカ)」が導入され、
この「いしるきゅうり」が定番メニュー入りを果たした。
もはや「いしる」なしの暮らしは考えられない。

とはいえ、
このメニューにしっかり寄り添えるのは
日本酒しかない。
日本酒エライ!




「合鴨のロース(ハーフサイズ)」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


合鴨の脂の味は
「合鴨の脂の味」としか表現のしようがない。
代わるもののない旨さだなぁと思う。

ジューシー赤身と脂の甘味の共同戦線。
濃厚な味わいの肉料理であっても
日本酒はバッチリ合うのだ。

日本酒エライ!
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE



「フグの卵巣の糠漬け」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


金沢に来たからには
現地でどうしても食べてみたかった一品。

超猛毒であるところのフグの卵巣(そのまま食べれば普通に死ぬ)
を、塩糠漬けにすることによって無毒化したもの。

地球上に存在する毒素でも
常に5本の指に入るテトロドトキシンが
なぜ塩糠漬けにすると抜けていくのか、
現代科学でも完全には解明されていないとか。

ナマコを最初に食った人間の勇気には感服するが、
それ以上に、
このフグ卵巣の糠漬けを編み出した人間の
食への執念には驚嘆する。

この製法が完成するまで
一体何人が命を落としたのか。

先人達の尊い犠牲の上に
今夜の旨い酒があるのだ。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE


アルミホイルに包まれ、
蒸し焼きにされたフグ卵巣。
糠漬けされたものを店主がさらに酒粕に漬けて
味を整えたとのこと。
塩辛いが、いろいろな発酵味が絡み合った
厚みのある味がする。

レモン汁を垂らして
大根の薄切りに載せると
さらに味わいが増し
さらにさらに酒の消費が増す仕組みだ。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE



「じゃえびの天ぷら」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE
「じゃえび」は甘エビやガスエビに似ているが、
別種のエビだとのこと。
あまり捕れず、足も早いので
かなりのレアキャラだそうだ。

味には毛ガニのような濃厚さがある。
非常に美味しい。




「ぎばさの酢のもの」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE
「ぎばさ」は「アカモク」という海藻。
粘りがあるのに、
海藻自体にはサクサクとした
軽快な食感があって旨い。




「実家製かぶら寿司」
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE
誤字じゃなくて、
実際にご主人の実家で作っているのだそうだ。

かぶら寿司は加賀の郷土料理。
カブの間にブリの身を挟んで
麹で漬け込む、
いわゆる「なれ寿司」。

タイミング的に
まだ仕込んで間もない頃だったので、
かなりフレッシュな味だった。

乳酸発酵が進んだ
濃厚熟成バージョンは
次回に期待したい。
(再訪する気満々)
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE

酒も料理も美味しいですが、
ご主人の日本酒愛が素晴らしく、
日本酒のことについて色々と教えてもらいました。
以下、ご主人によるレクチャーの覚え書き。


○「海の酒、山の酒」
 以前、とある海なし県の酒を仕入れて店に出したが、思いのほか売れなかった。
 おかしいな、と思いご主人は自ら試してみたが、どうも魚介系の肴と相性が良くない気がする。
 そこで今度は、その酒を山菜(コシアブラ)と合わせてみると、とても相性が良い。
 地酒というものは、自ずからその土地の肴に合わせるようにできている。
 だから、海の酒は海の肴、山の酒は山の肴と相性が良いことが多い。

○「酒は開封後も育つ」
 日本酒は開封したらすぐに飲んでしまわなくてはならない、ということはない。
 以前、ご主人が仕入れた酒で、どうにも気に入らない味わいの酒があって、開封はしたものの店に出すことができずにいた。
 かと言って料理酒にする事もできず、ずっと冷蔵庫の中に眠らせておいた。
 さらに時間が経ち、その酒は冷蔵庫からも追いやられ、常温下にしばらく放置された。
 ある日、ご主人が何気なくその酒を口にしてみると、別物ともいうべき旨い酒に変貌していた。
 全てに当てはまるケースではないが、開封後も時間とともに「育つ」酒はある。
 そういう、時間とともに変わっていく味を楽しむのも、日本酒の魅力である。
 ※この店では、常にご主人が酒のコンディションを見ながら、旨くなったタイミングで店に出しているとのこと。逆を言えば、この店で飲んで気に入って、自分で買って家で飲んでも、それが店と同じ味わいの酒であるとは限らないということ。

○「お燗の温度」
 お燗をつける時は、目的の温度に達したらお燗完了、ではなく、目的の温度を少し上回ってから徐々に冷めて目的の温度になったお燗の方が、酒が落ち着くので美味しい。
 お燗は「行き」よりも「帰り」で。
 お燗の温度は、厳密に越したことはない。
 慣れた酒かつ慣れた手順でお燗するとき以外は、温度計を使うのがいい。
 ※「能登誉」を燗でオーダーしたら、ご主人から店員さんに「38度で」という指示。店員さんはデジタル温度計を使ってお燗してくれるというこだわりぶり。人肌燗の美味しさを初めて知った。

○「料理との組み合わせ」
 濃厚な味わいの肴に淡麗な酒を合わせると、ビールのように「流し込む」形になってしまって、日本酒を十分に味わえないことがある。
 日本酒はごくごく飲むのではなく、料理とともにちびちび舐めるように味わうのが魅力。
 ゆえに、繊細な味わいの肴には淡麗な酒、濃厚な味わいの肴には重厚な酒をというように、その都度組み合わせを変えてみると面白い。

 他にもいろいろと、日本酒についての楽しい話を沢山聞かせて頂きました。
 聞けば聞くほど、さらに日本酒の奥深き世界にハマってしまいそう。




 「猩々」。
 酒も料理も、ご主人の人柄も素晴らしく、
 ぜひ再訪したいお店です。






(余談)
次の日、金沢は雪。

少し白くなった兼六園で
雪中梅を楽しみました。
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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE




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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE




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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE




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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE




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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE




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EOS5D Mark III + Carl Zeiss Makro Planar T* 2/50 ZE




by TamaWakaba | 2017-03-17 02:33 | 外食日記 | Trackback | Comments(2)
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【1】

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第31回 国宝松本城氷彫フェスティバル 全国氷彫コンクール (2017・1/21~22)


正月の朝の団欒。

テレビ局は軒並み特番で
どこのチャンネルも
賑やかさには事欠かない。

何の気なしに、NHKにチャンネルを変える。

すると、画面に見覚えのある光景が映し出されている。

高々と積み上げられた氷柱。

女性ものまねタレントの「氷彫刻家の平田浩一さんでーす」という声とともに
白いコックコートに身を包んだ平田さんが登場したので
年明け早々、のけぞって驚いた。

平田さんは正月の縁起物として
番組内で「タンチョウヅル」を
リアルタイムで完成させるのだという。

平田さんはチェーンソーを振りかざし、
早速、氷の切削に取り掛かる。

番組出演者の面々が驚きの声を上げるなか、
画面の横から
和食調理服と白和帽のアシスタントがさっと登場して、
平田さんに手を差し伸べる。
見ればなんと、それは昨年平田さんとタッグを組んだ
加瀬秀雄さんであった。

平田さんと加瀬さんは
昨年の松本城氷彫フェスティバルで金賞受賞。
その後、旭川で開催された
氷彫刻世界大会にも出場、
見事、総理大臣杯を手にしている。

その強力氷彫デュオが
元日の朝から画面の向こうで氷を彫っている。

正月早々良いものを見たと喜んだのもつかの間、
制作の様子を見るうちに
笑ってばかりはいられなくなった。

積み上げられた氷のいたるところから
水がとめどなく滴る。

常温であることに加えて
煌々と灯るスタジオ照明が
氷を炙り続けている。

氷彫制作には高温を通り越して
「灼熱」ともいうべきこの環境。
これまで見てきた氷彫フェスの
厳しかったどの局面よりも
さらに厳しい。

番組の後半、作業はなんとか
ツルの翼を接合する段階まで来ていた。
「この温度じゃ普通はくっつかないんですけどね」
平田さんはそう前置きしつつも
ドライアイスとコールドスプレーを使い、
追加できうる全ての冷気を総動員して
氷の翼を接合にかかる。

氷の翼を両手で支えている最中も
これは何なのか、
これからどうするのか、
と絶え間なくインタビューを受けるのだが、
「ちょっといま喋るのがきついんで・・・」
と余裕がなさそうに呟く平田さん。

状況が状況なだけに
ハラハラして見ていられない。
もしもその翼が落ちてしまえば
瞬時に完成は絶望的となる。

しかし、そんな心配をよそに
平田さんと加瀬さんは
翼の接合に成功。

最後には見事、
巨翼を展開して羽ばたくタンチョウヅルを
完成させたのだった。

それが、2017年元日の出来事である。



それからちょうど20日後の
1月21日。

長野県松本市
松本城。
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公園入口に掲げられた氷彫フェスの看板。

「 最後の氷彫コンクール The Final 」

長年この場所で
氷彫刻師たちが技を競ってきたこの大会も
今回が最後となる。

笑っても泣いても
これが最後なのだ。
この場所で
夜通し撮影することも
おそらく、もうないのだろう。

今までとは違う
複雑な気持ちを抱えながら
会場内に歩を進める。

時計はもうすぐ
16時を回ろうとしている。

夕暮れ前の黄ばんだ光のなか
競技開始に向け
氷の配分作業が進められている。
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西陽に照らされる松本城を背に
平田さんと加瀬さんはいた。

平田さんはホテルニューオータニの氷彫刻室長。
生粋の氷彫刻師。

加瀬さんはアルカディア市ヶ谷の和食料理長を務める傍ら
氷彫刻の技術を習得。
平田さんとは昨シーズンからタッグを組んでいる。
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氷柱15本が順に配分される。
1本の重さは約135キロ。
見た目よりも、はるかに重い。

この氷柱15本をいかに有効に使って
12時間以内に作品を完成させるかを競うのが
この大会だ。
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16時40分。
日没間近。
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照明が点灯する。
場内も賑わいを増してくる。
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16時55分。
作業の準備が完了。
氷彫刻のための道具が
所狭しと並ぶ。

プロの氷彫刻師だけあって
道具の種類と数が多い。
制作の場面に応じて
これらを巧みに使い分ける。
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夕暮れ。

氷のオブジェにも
明かりが灯る。
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場内の特設ステージで
氷彫コンクールの
開会式が始まる。
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今回の出場者は過去最多の
国内外合わせて計18チーム。
いつにない熱気だ。

松本市の坪田副市長の式辞。

大会関係者の高齢化や、温暖化による氷彫の展示環境悪化などを挙げ
氷彫コンクールの終了について説明する。

事情は色々あると思う。

ただ、この大会の終了は
本当に残念でならない。
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昨年の金賞受賞者、平田さんが
出場者を代表して挨拶。

「いつか、この大会が復活することを信じています」
という言葉が
強く印象に残った。

これで一旦は終わりにはなるけれど
いつか、そういう未来が来て欲しい。
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全員で記念撮影。
これも最初で最後の光景だ。
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しかし、感傷に浸っている暇はない。
これからが本番なのだ。

制作開始に向け
出場者は足早に持ち場へと急ぐ。
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氷彫コンクールはこれで見納めだということを
知ってか知らずか
いつになく
多くの観客で賑わう会場。

人々の口から
「これで最後なんだって」
という言葉を幾度となく耳にする。

やはり皆それぞれに
この大会を名残惜しんでいるのだろう。
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17:40
制作開始。

12時間にわたる
氷との格闘が始まる。
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氷彫制作の序盤は
ほぼ、
「採寸」「切断」「組み上げ」
という作業に終始すると言っていい。
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氷を切り分けると言っても
その場の思いつきで適当に切るという訳にはいかない。

使える氷は15本。
途中で足りなくなったからと言って
おかわりはできない。

適当に彫ってしまえば
作品はどんどん小さくなり
氷の屑の山ばかりが大きくなる。

限られた量の氷で
大きく迫力ある氷彫を作るために
制作者はみな細心の注意を払う。

その為、図面通りに採寸し、
正確なブロックに
氷を切断するのだ。
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氷の組み上げ。

氷彫刻に使われるのは
製氷工場で作られた「純氷」。
いわゆる、かき氷や飲料に使われる
硬く、透明度の高い氷だ。

切断前のフルサイズの純氷は「原氷」とも呼ばれ、
サイズは約約105×56×26cm。
重量は135kgだ。

ちなみにこれはJIS規格で定められている。


氷自体が透明で
見た目には重量感に乏しいが
実際には標準的な成人男性2人分ほどの重さがある。

この氷を氷ばさみを使って
人の背丈まで積み上げていく。

手慣れた大人が
二人がかりでやっと行えるほどの
重労働なのだ。
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原氷を半分に切断したもの。
これだけで約70kgだ。

これをさらに積み上げる。
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積み上げた氷の隙間に
ノコギリの歯を通して押し引きする。

規格どおりの氷ではあるが
輸送中に傷がついて表面が荒れていたり
汚れがついていたりすることがある。

そのまま放置すれば氷がぐらついたり
汚れが内部に閉じ込められてしまうおそれがある。

重なった氷塊の間にノコギリを通すことで、
互いに接する面をクリーニングしながら平らに整え
氷同士が強固に接着するようにする作業だ。
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さらに透明度を要する部位に関しては
組み上げの前に、
ノミを使って表面処理を行う。

ノコギリよりもはるかに鋭利な
ノミで氷を削ることで
鏡のように平滑で透明な面を得ることができる。
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そして組み上げ。

最初に作った大きな氷塊とは別に
小さな別の氷塊として組み上げる。
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氷彫刻の作り方は人それぞれで
最初に最大限の高さまで氷を積み上げ
一気に彫っていくやり方もあれば、
全体を幾つかのパーツに分けて制作し
後で接合するというやり方もある。

平田さんはほぼ、
後者のやり方をとっている。

この小ぶりな氷塊は、
後に接合されるパーツになるはずだ。
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18:24。
もう一つの氷塊が組み上がった。
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地元テレビ局の取材が入る。
一旦作業の手を止めて
インタビューに応じる平田さん。

去年の金賞受賞者ということで
平田さんの動向には
誰しも注目するところだ。
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原氷にチェーンソーで縦に切れ目を入れる。
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厚さ半分の氷板2枚にする。
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それを接合する。
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1枚の大きな氷板ができあがった。
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18:40。
氷の組み上げ作業が終了。

作業開始から1時間が経過した。
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この切り分けと組み上げは
完成後の華々しい作品のイメージと比べ
随分と地味で、淡々とした作業だ。

一見、何をやっているのかわからないこの作業に、
頭の上に大きな疑問符を浮かべたまま
唸っている観客も多い。

だが、この切り分けと組み上げの作業こそ、
氷彫制作における根幹とも言えるものなのだ。

もしも
土台がわずかでも傾いていれば、
組み上げた氷同士がズレていれば、
いずれ作品自体が大きく傾いてしまう。

そうなってから修正するのは不可能だ。

ゆえに制作者は
この作業に心血を注ぐ。

12時間の制作の序盤であるにも関わらず、
体力的にはいきなり全力疾走を要求される。

寒さの中、身体中の骨がきしむような大仕事だが
後々のことを考えると、
決しておろそかにできない。

そういう作業なのである。


― 【2】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】



by TamaWakaba | 2017-03-09 02:09 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【2】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】


平田さんが図面を見ながら
氷板に赤色サインペンを使って
デッサンを行う。

気温はすでに零度を下回っている。
氷点下では氷の表面は解けだすことなく、乾いている。
ゆえに、油性サインペンで描けるのだ。
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デッサンと言っても、
実際には最低限の線で
「この辺にこんな形を作る」
という「走り描き」に近い。

スケジュールが常にタイトな氷彫制作において、
時間的にどこに重きを置くかは重要だ。
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次に、
デッサンした線を参考にして
角ノミで筋彫りを施していく。
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気温が高く、氷の表面が濡れている時は
いきなりこの筋彫りから入ることもある。

筋彫りでは、曲線も図面に忠実に描かれる。
本当のデッサンといえるのは
この筋彫りなのかもしれない。
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筋彫りが終了。
幾重の曲線が織りなしているが
まだ何を作っているのかは
さっぱりわからない。
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筋彫りに沿って、ドリルでなぞっていく。
筋彫りの線は細く、浅い。
この後のチェーンソーや平のみを使った
荒々しい切削でも消えないように
線を深くする作業だ。
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深くした線に沿って
チェーンソーで氷を切っていく。

この切削作業が始まると
いよいよ氷彫刻を作っているという
雰囲気が高まってくる。

観客も一気に色めきだつ。
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平田さんが、筋彫りした線の上から
さらにドリルで深く氷をえぐる。
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氷に穴が開いた。
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平田さんが加瀬さんに
氷の彫り進め方について説明。
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そして、加瀬さんが
氷板の彫刻を引き継ぐ。
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氷板の各所に
穴を開けていく。
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細かい部分は
ミスしてしまうと修正が利かない。
慎重に彫り進める。
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一度打ち合わせをした後は、
二人ともに
黙って作業に打ち込む。

そういえば、去年に比べて
この二人が作業中に言葉を交わす機会が
大幅に減ったような気がする。

2シーズンに渡ってタッグを組むことで
以心伝心する部分も多くなったのかもしれない。
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一方、平田さんは
小さい方の氷塊の
彫刻を進めている。
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小ぶりの平ノミを使って
大まかな形を彫り出していく。
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形が見えてきた。

鋭利なノミで削られた氷は
そこだけ油を塗ったような光沢を持って輝く。
完成後の透き通ったツヤとは違って、
制作中でしか味わえない美しさだ。
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ノミで削った氷は、
細かな平面で構成された多面体だ。

そこで、研削用のドリルで
多面体の角を落とし
曲面を出していく。
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人の頭部が
現れてきた。
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そしてまた、平ノミで削る。

平田さんの表情から
渾身の作業であることが
伝わってくる。
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氷彫刻は3Dプリンターで模型を制作するように
はなから完全な形で姿を現すわけではない。

全体のバランスを見つつ
削っては修正、削っては修正を繰り返しながら
完全な形へと徐々に近づけていく。

削りすぎてしまったら
もう後はない。

しかし、削ることに躊躇していれば
時間がなくなっていく。

「豪快かつ繊細に」という
二律背反を地で行く作業なのだ。
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制作開始から2時間余り。
時計は20時を回ろうとしている。
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観客の熱い視線を浴びながら
氷との格闘は続いている。
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― 【3】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】



by TamaWakaba | 2017-03-09 02:08 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【3】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】


20:00。

賑わう会場。
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気温はすでに0度を下回っている。

このまま行けば、
さらに下がるのは間違いない。

ここ数年の大会では
暖かさに泣かされることが多かった。
雨の中、氷を彫ったこともある。

気温のことを心配しなくていいというのは
精神衛生上ありがたい。
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時折手を止めて
図面を確認する平田さん。
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そしてまた
彫り進める。

人物像背後の張り出した部分を
丹念に加工する。
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加瀬さんも、
氷板の加工を着々と進めている。
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複雑な曲線を一つ一つ切り抜いていく
地道な作業だ。
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くり抜いた空間が
少しずつ拡大していく。
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言葉はない。
彫り続ける。
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チェーンソーの刃が外れるトラブル発生。
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主要な工作器具であるチェーンソーが
使用不能になったらこの先どうするのか、と
こちらは内心焦ったが、
平田さんは慌てる様子もなく
早業でサッと直して
すぐに作業に戻る。

毎日自分の手足のように駆使する道具なので
やはり扱いも手慣れている。

当たり前といえば当たり前だが、
その当たり前さに感心する。
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20:20。
加瀬さんが手がけていた
氷板の加工作業に一区切りがつく。
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苦心して彫った大きな氷板を、
分割してしまう。
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平田彫刻の大きな特徴の一つは
この「分解」にある。

一般的に、
氷彫刻というのは「育って」いくものである。
時間の経過とともに
形なきところに形が現れ、
完成形に向かって、不可逆的に作業が進んでいく。

ところが、平田彫刻の場合、
一旦形を与えられた氷が
この「分解」という工程を経ることで
再び形を失うことがあるのだ。

ちょっと目を離した隙に
さっきまであったはずのパーツが見当たらない。
そういうことが、よくある。
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チェーンソーを使って、
薄い氷板を、
さらにスライスしようとしている。

原氷を2分割したこの氷板は
厚さが約13センチほどだ。
それをさらに半分にすれば
片方の厚みは約6センチあまり。

チェーンソーの刃の進め方を
わずかでも誤れば、
今までの努力が一瞬のうちに氷屑に変わってしまう。
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正確なチェーンソーさばきによって、
氷板は途中で割れることなく
無事、スライスに成功。
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20:36。
平田さんが彫っていた
人型の氷塊にノコギリが入る。
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胸から上が分割される。
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さらに胸から下も分割。
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次に
最初に積んだ大きな氷塊の上面を
平ノミで整える。
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ぬるま湯で温めたアルミ板を
氷に押し付け解かし、
断面を平滑にする。

よく見ると、最上段の氷は
直方体ではなく
向かって右側へ
微妙な傾斜がつけてある。
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その上に、先程分割した
人型の氷を積み上げる。

重さに歯を食いしばりながらの作業。

これほどの高さに人力で氷を持ち上げるには
一旦、氷塊を分割するほかはない。

分割せずに、そのまま組み上げるならば、
フォークリフトの支援を受ける必要がある。

だが、フォークリフトは諸刃の剣でもある。
利便性を得る代わりに、
相応のリスクも負わなければならない。

フォークリフトによって作業時間は確実に短縮できる。
しかし、短時間とはいえ、
作品の命運を、人の手に委ねることになる。
加えて、氷塊がより重くなることによって
位置合わせ等の微調整もより難しくなる。

平田さんがこの「分割」の手法を多用するのは
そういうリスクを可能な限り回避するためでもあるのだ。

氷彫制作の環境は、時と場所によって一変する。
現場によっては
フォークリフトの支援を受けられないこともある。
それどころか、終始一人きりの作業を
強いられることもある。

これまでそういう厳しい現場で
幾度となく氷を彫ってきた平田さんだからこそ、
スタンドアローンで完成形に持っていける
「分割」という手段を
重要視しているのかもしれない。
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氷の隙間に
水を流し込んで接着。
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続いて、胸から上のパーツを
組み上げる。
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20:56。
人型氷塊の組み上げ完了。
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作業の行方を
多くの観客が見守っている。
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― 【4】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】




by TamaWakaba | 2017-03-09 02:07 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【4】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】



制作開始から3時間が経過。
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気温は約マイナス1度。

一応は氷点下だが
順調に下がっていくということもない。

夜になっても
肌に感じるくらいの風が
吹いているせいなのだろう。

地表に溜まるはずの冷気が
風に流されてしまうのだ。
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他のチームも
作品の大きさが予想できるくらいにまで
作業が進んでいる。
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21:00。

平田さんは、
スライスした氷板の加工に入った。
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加瀬さんも、
別のパーツを彫り始めている。
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平ノミで余分な氷を削ぎ落とす。
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グラインダーで
平らだった面に
高低のグラデーションをつけていく。
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挽き廻しノコでこすって
表面やエッジを整える。

氷彫刻においてノコギリは
氷を切るだけではなく
表面処理の重要なツールでもある。
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仕上がりを確認する。
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次に、
表面加工用の特殊なビットを取り付けたドリルで
氷に無数の球体を刻みつけていく。
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ドリルで行うとはいえ、
気の遠くなるような作業だ。
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21:43。
1枚めの氷板への加工が完了。
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加瀬さんは
氷板の加工を進めながら
氷の切り出しや
平田さんの作業の下準備を
黙々と続けている。
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図面を確認しながら
氷のサイズを入念にチェックする。
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集中して自分の作業を進めつつも、
時折、平田さんの作業に
さっと注意を向けているのが分かる。

実際に話してみて感じたことだが、
加瀬さんは実に「気配りの人」である。

氷彫制作の作業中でもそれは発揮され、
タッグの以心伝心を支えている。
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制作開始から4時間が経過。
氷屑を収集する軽トラが動き出した。
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― 【5】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】

by TamaWakaba | 2017-03-09 02:06 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【5】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】


まもなく22時。

露店も店じまいとなる。
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同時に、観客の足が急速に遠のいて
会場は閑散とした雰囲気に変わる。
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22時。

観客がいようといなかろうと
制作作業は淡々と続く。

平田さんは2枚目の氷板の加工に取り掛かっている。
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枝分かれするような造形で
かつ、その裏表に細工を施すには
かなりの手間がかかる。
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22:20

2枚目の氷板のスライスを開始。
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今回も失敗は許されない。

慎重に刃を進めていく。
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氷板は大きいので、
刃が広いチェーンソーであっても
1回でスライスすることはできない。
片方に刃を入れ終わると
反対側からも刃を入れる。
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氷板の正中線を外さないよう
ゆっくりと刃を進める。

もしもチェーンソーの刃が
わずかでも傾けば、
氷板はいびつな三枚おろしになってしまう。

平田さんも慎重にならざるをえない。
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20:24

2枚目の氷板をスライス完了。

完全な平面で分割されている。

5分に満たないような作業だが
ハラハラするような緊張感を味わう。
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気温は氷点下5度に達しようとしている。

いつになく冷え込んできた。

氷彫刻にとっては適した環境だが、
制作者は寒さに耐えながらの作業を強いられる。

なんとも皮肉なものだ。
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制作開始から5時間が経過。

平田さんは氷板の加工、
加瀬さんは氷の切り出しを続けている。
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時折、図面を見ながら
小さな打ち合わせが行われる。
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そしてまた、作業を続ける。
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完成した氷彫刻は華麗だが、
そこに至るまでの過程は
派手さには遠い、
地道な作業の連続だ。
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氷彫刻制作は
忍耐の世界なのだ。
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23:00

例年であれば、
時間とともに僅かづつでも
彫刻が大きくなっていくのだが、
今年は、
氷を分割しての作業が長く続いているので
見た目に変化が乏しい。

作業が進進んでいることは確かなのだが、
傍目にはなかなか進捗状況が掴めない。
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23:30

新たな動きがあった。
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平田さんが、
発泡スチロール製の箱から
ドライアイスを取り出す。
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小さく割ったドライアイスを
加工済みの氷板の縁に載せていく。
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1気圧下において、
摂氏0度を下回ると、水は氷になる。
だが、氷は常に0度なわけではない。
周囲が氷よりも冷たければ
氷の温度もそれに従って下がる。

つまり、マイナス1度の氷もあれば、
マイナス20度の氷もあるのだ。

冷凍庫から出したばかりの氷を手にとった時、
手のひらに張り付いて、痛い思いした経験は
誰しもあるだろう。
だが、常温にしばらく放置した氷は
手に張り付くということはない。

つまり、
より冷えた氷は
それ自体の冷気によって
触れたものを凍らせる力が強くなるのである。

この手法には、
ドライアイスのマイナス79度という極低温によって、
氷にさらなる凍結力を与え
氷同士の接着力を高めようとする狙いがあるのだ。
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今までの大会でも、
このドライアイスは何度も登場した。

しかし、その大部分は
気温が高く、氷が溶けだしてしまうような状況で
使われることがほとんどだった。

ところが今回は、
決して氷が溶け出すことのない寒さの中にいる。
氷同士が普通にくっつく状況なのだ。

そこにあえて、
平田さんがドライアイスを使うのはなぜなのか。

その理由が、
この後、徐々に明らかになっていく。



― 【6】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】

by TamaWakaba | 2017-03-09 02:05 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【6】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】



人物像の背中に張り出した部分の断面を
平ノミで整える。
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さらに、アルミ板で平面を出す。
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加工済みの氷板を
チェーンソーで
再度分割する。
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ゴム手袋から
ぬるま湯で絞った軍手に付け替える。

薄く脆い氷板を持ち運ぶ時
僅かでも手元が狂えば
最悪の結果を招く。
それを防ぐための装備だ。

だが、氷の冷たさは
直に掌に伝わり
痛みに耐えながらの作業を強いられる。
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23:57

ついに、
氷板の組み上げを開始。
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密着させた氷の間に
水を通す。
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小さな隙間を
水を含ませた細かな砕氷(平田さんは「雪」と呼ぶ)で埋め、
コールドスプレーで急冷却する。
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1月22日
0:00

日付が変わる。

最初に接着した氷板の
辺縁部をさらに付け足していく。
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なんと平田さんは
氷を足場にしている。

以前も平田さんは
3段重ねのぐらつくビール箱に乗って
ヒヤヒヤしたことがあったが、
今回はそれにもまして
恐ろしすぎる。
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0:16
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さらに辺縁部を接着。

0:21

氷板は、大きく広げた
透かし羽となって現れてきた。
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羽の組み上げは
一旦ここで中断し
平田さんは台座部分の加工に移る。
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台座部分の角を切り落としていく。
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そこに、チェーンソーで
深めの筋を入れていく。
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加瀬さんは
小さな氷塊の加工に取り掛かっている。
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平ノミで
形を削り出す。
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曲面を持った形が見えてきた。
何を作っているのだろうか。
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台座の加工があらかた進んだところで
次に、平田さんは人物像部分の加工に移る。

平田さんは
一箇所だけを仕上げてしまうということはせず、
全体のバランスを見ながら、
同時進行的に各所へ手を入れていく。

これは平田さん流の
破綻のない造形を実現するための秘訣でもある。
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荒削りだった氷の表面が整えられ
女性の首筋の柔らかな曲線が
現れてくる。
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三次元の曲面は
図面に書き表すことができない。

平田さんは
作業を進めながらリアルタイムで
自分の頭のなかにある三次元立体を
氷に反映させていく。

何度見ても
魔法のような手業なのである。



― 【7】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】

by TamaWakaba | 2017-03-09 02:04 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【7】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】


1:00

加瀬さんが下削りした氷塊を
平田さんがさらに削っていく。
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それを本体に接合。
a0155104_21391730.jpg



像の左足だ。
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1:08

すぐに、もう一つの氷塊の加工が始まる。
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紛れもなく
右足だ。
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本体に接合。
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1:12

工程開始から10分余り。
12時間の制作時間に比べれば
瞬間ともいうべき短時間に、
氷彫刻は劇的な変化を遂げる。

氷彫刻は植物のように
ゆっくり育つこともあれば、
このように
爆発的に成長することもあるのだ。
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1:15

制作も折り返し地点を過ぎ、
各チームもそれぞれ
具体的な造形が見えてきている。
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平田さんは
先程接合した両足の曲面を出す作業に入った。
a0155104_22342638.jpg



図面も見ず
流れるように
ドリルを氷に這わせていく。
a0155104_22355473.jpg



ものの5分もしないうちに
ゴツゴツとした氷の塊が
脚線美を宿している。
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制作開始からもうすぐ
8時間が経過しようとしているが、
この間、平田さんも加瀬さんも
休憩を取ることなく
手を動かし続けている。

恐るべき集中力だと思う。
a0155104_22504156.jpg




再び、加瀬さんが
別の氷塊を切り出し。
a0155104_22572689.jpg



平ノミで大まかな形を作る。
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平田さんがそれをさらに削る。
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1:56

それを左腕として
本体に接合。
a0155104_23032678.jpg




チェーンソーで余分なところをカット。

平田さんは、氷が込み入った場所でも
速さと効率を優先して、
こうやってチェーンソーを用いることがある。

もちろん、チェーンソーの刃先を
正確に操れてこその方法だ。
a0155104_23284805.jpg



時計は間もなく
午前2時。

制作も佳境を迎える。


― 【8】に続く ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】


by TamaWakaba | 2017-03-09 02:03 | 氷彫刻
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平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』 【8】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】


2:00

気温はマイナス4度。
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ペットボトルの水(アミノバリュー入り)も
ついに凍り始めた。
a0155104_20192144.jpg



カメラザックの上にも
霜が降りる。
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深夜の冷え込みは身体に応えるが
氷彫刻にとっては
恵みの寒さだ。


平田さんは
台座部分の加工を続ける。
a0155104_20255725.jpg



加瀬さんは、
羽の辺縁部を制作する。
a0155104_20263235.jpg



2:26

羽の接合作業が
再開される。
a0155104_20290216.jpg



右羽の付け根部分を接合。

大きく広がった羽全体の荷重を
この部分で全て受け止めるため、
接合には万全を期さなければならない。
a0155104_20303550.jpg



2:34

付け根部分の接合が完了。

左羽は制作の早い段階で組み上げたが
この右羽がここまで手付かずだったのはなぜだろうか。

今回の大会は
過去最高の18チームが参加し、
制作場所がいつになく手狭だ。
自分たちの彫刻のすぐ隣に
重なり合うようにして
他のチームの作品が迫っている。

ゆえに
作業場の中を動き回る時、
彫刻のすぐ近くを通ることを余儀なくされる。

あまつさえ今回は
薄い羽を広げた、極めて繊細な彫刻だ。
もしも移動の際、身体が
羽にぶつかってしまったらどうなるか。

つまり、
一見して不可解なこの制作順序も
平田さん流のリスクマネジメントだったのだ。
a0155104_20341458.jpg



辺縁部の
小さな部品を接合。
a0155104_20461597.jpg



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2:41

右羽上辺部の接合。

前に接合した羽の根本に重さがかかる。

果たして荷重に耐えることができるか、
緊張の一瞬だ。
a0155104_20572176.jpg



無事、接合が完了。
a0155104_21010647.jpg



そこにさらに辺縁の部品を接合していく。
a0155104_21032683.jpg



2:53

ハプニング発生。

いま付けたばかりの部品が
落下してしまった。

パシンという
氷が砕ける音が
かすかに響く。
a0155104_21073401.jpg



小さな部品とはいえ
氷なのでそれなりに重さがある。

しかし、薄い羽の断面は
その重さを支えるのにギリギリの大きさだ。

コールドスプレーで周りから固めたものの
接合面内部の氷結が十分ではなく
強度が出ていなかった。
a0155104_21143112.jpg



幸いにして
落下の仕方は良かった。

部品が粉々になってしまうという
最悪の事態は回避された。
a0155104_21152431.jpg
(一部トリミング)


すぐに、応急処置を施す。
a0155104_21183502.jpg



ドライアイスで接合面の温度を下げて
接着力を高めた上で
再度、接合を試みる。
a0155104_21252437.jpg



今度は上手く行った。

しかし、割れてしまった部分については
別に接合し直さなくてはならなくなった。
a0155104_21253519.jpg


明らかに
接合の作業に
時間を取られている。

時計はすでに
午前3時。

いつもであれば、
完成形が見えている頃だが、
今回は通常と全く手順が違っており、
作業の終着点がいまだ見えてこない。

時間内に完成するのだろうか。

一抹の不安がよぎる。


― 【9】に続く ―

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by TamaWakaba | 2017-03-09 02:02 | 氷彫刻
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